子供に鍵を持たせることは、子供の自立を促す上で重要なステップですが、それは同時に、子供に「責任」というものを教える、絶好の機会でもあります。そのために不可欠なのが、鍵を渡す前に、親子でしっかりと向き合い、鍵の扱いに関する「我が家のルール」を一緒に作り、約束事として共有することです。このルール作りは、一方的に親が押し付けるものであってはなりません。なぜそのルールが必要なのか、その理由を子供が理解できる言葉で丁寧に説明し、子供自身が「自分のこと」として納得して守れるように導くことが大切です。まず、決めるべき約束事の第一は、「鍵の定位置」です。前述の通り、「ランドセルのこのポケット」「帰宅後のこのフック」といった、鍵の「住所」を明確に決め、必ずそこに戻すことを約束します。これは、整理整頓の習慣を身につける上でも役立ちます。第二に、「鍵の扱い方」についての約束です。例えば、「鍵は、絶対に友達に貸したり、見せびらかしたりしない」「家の前で鍵を出す時は、周りに不審な人がいないか確認する」「もし鍵を落としたら、すぐに正直にお父さんやお母さんに言う」といった、具体的な行動規範を教えます。特に、「失くしても絶対に怒らないから、すぐに言うこと」という約束は、問題を隠蔽させないために極めて重要です。第三に、「もしも」の時のための約束です。もし鍵を失くして家に入れなかった場合、どこで待つのか。近所の祖父母の家や、信頼できる友達の家、あるいは地域の「こども110番の家」など、安全に待機できる場所を、あらかじめ複数決めておきます。これにより、子供が一人で途方に暮れるのを防ぐことができます。これらの約束事を、紙に書いて子供部屋に貼っておくのも良いでしょう。鍵という小さな道具を通じて、社会のルール、責任感、そして自己防衛の意識を育んでいく。この「鍵の教育」こそが、子供の健やかな成長と、家族の安全を守るための、揺るぎない土台となるのです。
我が家のルール作り「鍵と子供の約束事」