防犯の専門家として、多くの住宅のセキュリティ診断を行ってきましたが、驚くほど多くの家庭で、玄関の防犯意識は高いのに、窓の防犯が手薄になっているという現実を目の当たりにします。侵入犯の視点に立てば、窓は最も魅力的で、そして容易な侵入口です。本当に効果的な防犯対策とは、玄関だけでなく、この窓という最大の弱点を、いかにして堅固な要塞に変えるかにかかっているのです。まず、基本となるのが「ワンドア・ツーロック」の考え方を、窓にも適用すること、すなわち「ワンウィンドウ・ツーロック」の実践です。標準装備のクレセント錠は、あくまで窓を密閉するための「仮締め」と考え、それとは別に、必ず「補助錠」を追加してください。サッシのレールに取り付ける簡易的なものでも、付けないよりははるかにましです。これにより、侵入にかかる時間を稼ぎ、犯行を断念させる確率を格段に高めることができます。可能であれば、クレセント錠自体も、鍵付きやダイヤル式の防犯タイプに交換するのが理想です。次に、ガラスそのものを強化する「防犯フィルム」の活用です。侵入犯は、ガラスを破る際の音と時間を非常に嫌います。防犯フィルムが貼られたガラスは、叩いてもなかなか貫通させることができず、大きな音と時間を要するため、犯行を諦めさせる上で絶大な効果を発揮します。これは、補助錠と並行して行うべき、必須の対策と言えるでしょう。さらに、侵入を「知らせる」仕組みも重要です。窓が開けられたり、ガラスの振動を検知したりすると、大音量のブザーが鳴り響く「窓用防犯ブザー」は、安価でありながら非常に効果的です。犯人を威嚇し、周囲に異常を知らせることで、犯行の継続を困難にします。これらの「時間を稼ぐ(鍵の強化)」「侵入を困難にする(フィルム)」「異常を知らせる(ブザー)」という、三つの異なるアプローチを組み合わせることで、窓のセキュリティは飛躍的に向上します。どれか一つだけではなく、これらを複合的に対策すること。それこそが、プロが推奨する、本当に効果的な窓の守り方なのです。
防犯のプロが教える、本当に効果的な窓の守り方