我が家は、私が子供の頃から住んでいる、築30年以上の古い一戸建てです。玄関の鍵も、家を建てた当時のままの、ギザギザしたごく普通の鍵でした。長年の使用で、少し回りが渋くなってはいましたが、「鍵がかかるから大丈夫だろう」と、特に気に留めることもなく、毎日を過ごしていました。その意識が変わったのは、自治会の回覧板で、近所で空き巣被害が連続して発生しているという、一枚の知らせを見たことがきっかけでした。それまでどこか他人事だと思っていた「防犯」という言葉が、急に生々しい現実味を帯びて、私の心に突き刺さったのです。その夜、私は家族と話し合いました。「うちの鍵、今のままで本当に安全なのだろうか」。妻も、高校生の娘も、同じように不安を感じていたことが分かりました。私たちは、すぐにインターネットで最新の鍵について調べ、ピッキングに強く、合鍵の複製も簡単にはできないという「ディンプルキー」への交換を決意しました。DIYも考えましたが、家族の安全に関わる最も重要な部分だからこそ、今回はプロの鍵屋さんに依頼することにしました。依頼した当日、来てくれた作業員の方は、手際よく、そして丁寧に、古いシリンダーを取り外し、新しいピカピカのディンプルシリンダーを取り付けてくれました。作業自体は30分ほどで完了。受け取った新しい鍵は、ずっしりとした重みと、精密なディンプルのくぼみが、いかにも頼もしい印象でした。その日の夜、私が初めて新しい鍵で玄関を施錠した時の、「カチャリ」という、重厚で確かな手応えは、今でも忘れることができません。それは、単にドアがロックされた音ではありませんでした。それは、これまで我が家に漂っていた漠然とした不安が消え去り、確固たる「安心」が、家全体を包み込んだ音のように感じられたのです。妻も娘も、同じように感じていたようでした。たった一つのキーシリンダーを交換しただけ。しかし、その行為は、私たちの心に、何物にも代えがたい平穏と、家族で安全について語り合ったという小さな連帯感をもたらしてくれました。
体験談。たった一つの鍵交換が、家族に安心をもたらした日