ダイヤル式南京錠の最大のメリットは、鍵が不要なこと。しかし、それは同時に、暗証番号を忘れてしまった瞬間に、ただの開かない金属の塊と化すという、最大のデメリットもはらんでいます。長期間使っていなかったスーツケースや、古い道具箱に付けられた南京錠の番号が思い出せない。そんな絶望的な状況で、破壊する以外の方法はないのでしょうか。実は、時間と根気さえあれば、多くのダイヤル式南京錠の暗証番号を解読することが可能です。ここでは、一般的な3桁または4桁のダイヤル式南京錠の解読方法の一つをご紹介します。この方法は、製品の構造上の「遊び」や「個体差」を利用したものです。まず、シャックル(U字の金具)を、開ける方向に軽く引っ張り続けます。この「テンションをかけ続ける」という状態が、解読の鍵となります。次に、テンションをかけたまま、一番端のダイヤル(例えば一番右のダイヤル)を、「0」から「9」までゆっくりと回していきます。すると、ほとんどの南京錠では、特定の数字に差し掛かった時に、指先に伝わる感触がわずかに変わったり、「カチッ」という微かな音がしたり、あるいはダイヤルの動きが他よりも少しだけ固くなったりする瞬間があるはずです。これが、その桁の「当たり」の数字である可能性が高いのです。なぜなら、正しい数字に揃うと、内部の機構がわずかに噛み合い、その変化が指先に伝わるからです。この「当たり」の数字を見つけたら、その数字にダイヤルを固定したまま、テンションはかけ続けます。そして、今度はその隣のダイヤルで、同じように「0」から「9」まで回し、感触の変化を探ります。これを、全ての桁で繰り返していきます。全てのダイヤルが「当たり」の数字に揃った瞬間、テンションをかけていたシャックルが、カチャリと音を立てて開くはずです。この方法は、ある程度の集中力と、指先の繊細な感覚が必要ですが、特別な道具は何もいりません。破壊する前に、この頭脳戦に挑んでみる価値は十分にあるでしょう。